はじめに

演出 齋藤敏明より

近年、プロジェクションマッピングなどの最新映像技術を取り入れた演出による舞台公演が増えています。

イギリスの「ロイヤル・シェイクスピア・シアター」において、2016年11月8日から翌年1月21日までの期間で、シェイクスピア最後の作品として知られる「The Tempest」(邦題「あらし」)を上演し、様々な最新技術を駆使した、これまでにない全く新しい映像特殊効果を採用したことで注目を集め、その上演の模様はDVD化され、広く知られることになりました。

また、2018年4月に日本公演も行われた、ベルリン・コーミッシェ・オーパーのオペラ公演『魔笛』(バリー・コスキー演出)も、これまでのプロジェクションマッピングの概念を打ち破るような大胆な映像演出で、歌手の演技との一体化を図り、大好評を得ました。

日本においても舞踊や音楽分野において、そうした映像技術を演出に組み込んだステージが見られるようになってはいますが、パフォーミングアーツ分野においては、予算や技術的な問題から、まだまだその例は多くありません。

しかし、多くの大学、専門学校では、情報デザイン、メディアデザイン専攻の研究室、学生たちが、最新の映像技術研究や音楽楽曲制作に取り組み、成果を上げています。

今回の制作スターフにも参加する、愛知工業大学の鳥居一平教授率いる<TEAM AI>も海外での評価を集めるなど、既に目覚ましい活躍をしています。

また音楽制作で参加する大同大学メディアデザイン専攻や名古屋音楽大学映像音楽コースの学生たちのコンピューターサウンド分野における活動も興味深いものです。

今回のこの企画では、プロジェクションマッピング映像を単なる舞台背景としてではなく、より立体化された映像作品としてデザイン演出を施し、演劇、舞踊、歌、音楽など多分野のパフォーミングアーツを融合させた芸術作品の上演を目指します。そして、最新のテクノロジーアートとのコラボレーションを図ることで、今まで表現することが難しかったファンタジーの世界を追求し、これからの新しい舞台芸術の可能性を生み出したいと考えました。

その題材が、なぜ、シェイクスピアなのか。それは、シェイクスピア作品の普遍性、現代性はもちろんのこと、「役者は古典によって磨かれる」の言葉を受けて、企画立案の役者らが新たな切り口で、改めてシェイクスピア作品に取り組みたいという欲求が企画の始まりでもあったからです。さらに上記のような映像演出を考えた場合には、シェイクスピア作品の中でも、『テンペスト』が最適だと判断しました。そこで『マッピングDEシェイクスピア』と銘打ち、『The Tempest(テンペスト)』というタイトルでの上演という本案に至りました。さらに出演者やスタッフも年齢や経験、ジャンル、活動域という枠を越え、広く参加を呼びかけ、単なる公演ではなく、文化芸術の一つのムーブメントとして創り出したいと考えます。

そして、叶うならば、本企画が一回限りではなく、規模の大小はあれ、定期的に開催される企画公演として定着させたいと思います。それが地元の文化芸術の向上につながり、名古屋の文化芸術力を発信することになると確信します。